相続とは、亡くなった方（被相続人）の財産や権利・義務を家族や親族（相続人）が引き継ぐことを指します。不動産だけでなく、預貯金や株式、借金なども相続の対象となります。相続は被相続人が亡くなった瞬間から始まり、法律に基づいて手続きが進められます。まず死亡届の提出や葬儀などの初期対応を行い、その後、戸籍謄本などを集めて相続人を確定し、財産の内容を調査します。財産目録を作成したうえで、相続人は相続するか放棄するかを3ヶ月以内に判断し、必要に応じて遺産分割協議を行います。協議がまとまれば、不動産の名義変更や預金の解約など具体的な手続きに進みます。相続税の申告や納税は10か月以内に行う必要があり、スケジュール管理がとても重要です。

相続手続きがスムーズに進むかどうかは、生前の準備に大きく左右されます。財産の全体像が不明確だったり、名義が古いままになっていたり、相続人同士の認識にズレがあると、手続きや協議が長引く原因になります。元気なうちから、所有している不動産や金融資産、借入、保険契約などをリストアップし、登記情報と現況が一致しているか確認しておくことが大切です。こうした情報整理が、相続人への引き継ぎや申告準備を円滑にします。また、「誰に何を遺すか」を明確にした遺言書の作成も有効です。自筆証書遺言を法務局で保管したり、公正証書遺言を活用することで、形式面でも安心して意思を残せます。家族構成や過去の経緯に応じて、兄弟間のトラブルや前婚の子ども、介護貢献の偏りなどにも配慮しながら準備を進めましょう。

近年は、認知症リスクに備えて「家族信託」を活用するケースも増えています。家族信託は、財産の管理権限を信頼できる家族に託す制度で、成年後見制度よりも柔軟な運用や費用面でのメリットがあります。また、生前贈与を活用した節税対策も重要です。年間110万円までの非課税枠を利用した贈与や、相続時精算課税制度、教育・結婚資金の一括贈与特例など、状況に応じて最適な方法を選ぶことができます。これらの対策を早めに検討し、専門家と相談しながら進めることで、将来のトラブルや税負担を大きく減らすことができます。

不動産を相続した場合、2024年4月からは相続登記が義務化され、3年以内に名義変更を行わないと過料が科される可能性があります。登記手続きに必要な書類や準備は早めに進めておくことが大切です。また、相続税の申告と納税は、相続開始から10か月以内に済ませる必要があります。現金が足りない場合は延納や物納といった方法も選択できますので、早めに資金計画を立てておくと安心です。

遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要で、実印や印鑑証明書も用意しなければなりません。協議がまとまらない場合は、調停や裁判で解決を図ることもありますので、冷静な対応が求められます。また、相続したくない借金などがある場合は、3か月以内に家庭裁判所へ申述して相続放棄や限定承認を選ぶことができます。判断を迷ったときは、早めに専門家へ相談することが大切です。